通院に時間がかかる地域での眼科との付き合い方

最終確認

うっすらと雪をかぶった田んぼと山並みを背に、道ばたのバス停で待つ人の後ろ姿

京都府の北のほう、丹後や中丹の地域、そして府内の山あいの集落では、いちばん近い眼科まで車でかなりの時間がかかる暮らしも珍しくありません。バスや列車の本数が限られ、乗り継ぎを含めると半日がかりになることもあるでしょう。

距離があると、どうしても「よほどのことがない限り行かない」という考えに傾きがちです。けれども目の病気には、自覚症状がないまま進むものや、決まった間隔で検査を続けることで見え方を守れるものが少なくありません。このページでは、通院に時間がかかる地域で、眼科と長く付き合っていくための工夫を考えます。地域の事情は人によって違うので、ここに書いたことは、かかっている眼科の医師と話し合う材料にしてください。

通院を「その都度」から「年間の予定」へ

遠くの眼科に通う人にとって、いちばんの工夫は、通院を年間の予定として先に組み込んでしまうことです。

定期的に通っているなら、次はいつごろ来ればよいかを医師に確かめ、その日をカレンダーに書き込みます。農作業の忙しい時期、地域の行事、家族の予定、雪の季節。避けたい時期が分かっているなら、それも医師や受付に伝えて、無理のない日程を一緒に考えてもらいましょう。

受診のたびに、次の予約を取ってから帰る習慣をつけるのも効果的です。家に帰ってから電話で予約を取ろうとすると、つい先延ばしになります。

瞳を開く検査の日の行き帰り

眼底をくわしく調べるときには、瞳を開く目薬(散瞳薬)を使います。目薬が効いているあいだは数時間、まぶしく、ピントが合いにくくなるため、車やバイク、自転車の運転は控える必要があります。車での通院が当たり前の地域では、ここがいちばんの悩みどころかもしれません。

行き帰りの手段 気をつけたいこと
家族や知人の送り迎え 検査が長引くこともあるので、迎えの時間には余裕を持たせる
バスや列車 帰りの便の時刻を先に調べておく。待合所や車内でもまぶしさが続く
タクシー 地域によっては台数が少ない。予約できるか前もって確かめる
自治体などの移動支援 通院に使える送迎の制度がある地域もある。役場の窓口で尋ねてみる

自分で運転して行くしかない事情があるなら、そのことを正直に眼科に伝えてください。瞳を開く検査を別の日に回す、目薬が切れるまで院内で休んでから帰るなど、どうするのがよいかを一緒に考えてもらえます。運転できない状態で無理にハンドルを握ることだけは避けてください。帰り道のまぶしさをやわらげるサングラスや帽子も、忘れずに持って行きましょう。

雪の季節の通院計画

北部の冬は、雪で道の様子が一日のうちに変わることがあります。予約の日に大雪が重なると、無理に出かけるか、予約を取り消すかで迷います。

雪の季節を見越して、次のような準備をしておくと安心です。

  • 冬のあいだの受診日を、比較的天気の安定しやすい時期や時間帯に寄せられないか、秋のうちに相談しておく
  • 毎日使う目薬は、冬に入る前に残りを確かめ、受診が延びても切れないか考えておく
  • 大雪の予報が出たら、前日のうちに電話で予約の変更を相談する
  • 冬用タイヤや、雪道の運転に慣れた家族の送迎など、移動の手段を早めに決めておく

予約を変える場合も、取り消したままにせず、その場で次の日程を決めることが大切です。雪が解けてから行けばよいと考えているうちに、数か月が過ぎてしまうことがあります。

晴れた日の雪の照り返しにも気をつけてください。雪の上では紫外線が強く跳ね返り、長く外で作業をしていると目が痛くなることがあります。雪かきや雪の多い道を歩くときは、サングラスや帽子で目を守りましょう。

定期通院を途切れさせない

緑内障の場合

緑内障は、自覚症状がほとんどないまま、少しずつ視野が欠けていく病気です。点眼薬で眼圧を下げる治療が一般的で、定期的に眼圧や視野を調べながら、治療の効果を確かめていきます。症状がないからと目薬をやめたり、通院の間隔を自分で空けたりすると、気づかないうちに進んでしまうおそれがあります。くわしくは「緑内障:自覚症状のないまま進む病気と40歳からの検査」をご覧ください。

糖尿病網膜症の場合

糖尿病のある人は、目に症状がなくても、定期的に眼底検査を受けることが勧められています。内科には通っていても、眼科には何年も行っていないという人もいるかもしれません。内科の受診日と眼科の受診日を近づける、検査の結果をお互いの医師に見せるなど、二つの通院をつなげて考えると続けやすくなります。くわしくは「糖尿病と目:症状がなくても眼底検査を続ける理由」にまとめています。

薬の残りを数える習慣

遠くに住んでいると、目薬が切れたからといってすぐにもらいに行くことはできません。月に一度、カレンダーの決まった日に残りの本数を確かめる、次の受診日までに足りるかを家族と一緒に見る、といった習慣をつけておくと安心です。足りなくなりそうなときは早めに眼科に相談してください。何日分を出せるかは、目の状態を見て医師が判断します。

見え方の変化に、早めに気づくために

通院の間隔が空きやすいからこそ、ふだんの暮らしの中で見え方の変化に気づけるようにしておきたいものです。

ひとつは、ときどき片目ずつで見てみることです。両目で見ていると、片方の目の見えにくさをもう片方が補ってしまい、気づくのが遅れることがあります。カレンダーの数字や、窓枠のまっすぐな線を、片目を手でかくして見比べてみましょう。方眼のような図を使うアムスラーチャートは、加齢黄斑変性などのセルフチェックの目安になります。ただし、あくまで目安で、診断の代わりにはなりません。使い方は「加齢黄斑変性とアムスラーチャート:見え方のセルフチェック」で紹介しています。

もうひとつは、家族の気づきです。段差でつまずくことが増えた、テレビに近づいて見るようになった、新聞や本を読まなくなった、車をこすることが増えた。本人より先に、まわりが変化に気づくこともあります。こうした様子が続くときは、次の予約を待たずに眼科へ相談してください。

紹介状と、大きな病院との行き来

くわしい検査や手術が必要になると、府北部の基幹病院や京都市内の大学病院などを紹介されることがあります。遠い病院への通院はたいへんですが、紹介状があれば、それまでの経過を踏まえて診てもらえます。

手術や専門的な治療が一段落したあとは、ふだんの経過観察は地元の眼科で続ける、という形をとることも多くあります。病院と地元の眼科が情報をやりとりしながら診ていく流れです。どちらに、どのくらいの間隔で通えばよいのか、病院で説明を受けたときに確かめておきましょう。紹介状のしくみについては「眼科の探し方と受診ガイド」でも触れています。

家族が付き添うとき

離れて暮らす子どもや親族が、帰省に合わせて付き添うこともあるでしょう。付き添う人ができることは、送り迎えだけではありません。

医師の説明を一緒に聞いてメモをとる、次の予約の日を共有しておく、目薬のさし方や回数を本人と一緒に確かめる。こうしたことが、離れているあいだの安心につながります。説明を聞くときは、本人が何を気にしているのかを先に聞いておき、診察室で代わりに質問できるようにしておくとよいでしょう。

目の検査は、対面が基本です

遠くて通えないなら、画面越しに相談できないかと考える人もいるかもしれません。電話やオンラインでの相談を取り入れている医療機関もありますが、眼圧や眼底、視野などの検査には専用の機器が必要で、目は画面越しでは十分に調べられません。

「最近どうも見えにくい」「目薬が合わない気がする」といった相談のきっかけとして電話を使うのはよい方法です。そのうえで、検査が必要かどうか、いつ来ればよいかは、眼科の判断に従ってください。

近くに眼科がないので、眼鏡店で視力を測ってもらうだけで済ませている、という人もいるかもしれません。眼鏡店での測定はメガネの度数を合わせるためのもので、目の病気があるかどうかまでは分かりません。度数を合わせてもすっきり見えないときは、病気が隠れていることもあります。メガネを作り替える前に、一度は眼科で目の状態を確かめておくと安心です。

急な症状のときは、距離を理由に迷わない

遠いからこそ、「もう少し様子を見よう」と考えてしまいがちです。けれども、次のような症状は距離にかかわらず、その日のうちの受診が必要です。

  • 光が走って見える、黒い点や糸くずのようなものが急に増えた、視野が欠けてカーテンがかかったように見える(網膜剥離のサインのことがあります)
  • 目の強い痛みとともに、かすみ、頭痛、吐き気がある(急性緑内障発作のことがあります)
  • 急に片目が見えにくくなった
  • 薬品が目に入った、目にけがをした

どこへ行けばよいか分からないときや、受診を急ぐべきか迷うときは、救急安心センターきょうと(#7119)に電話で相談できます。命に関わると感じたら、迷わず119番に電話してください。応急手当の方法は「目の救急:すぐ受診したい症状と応急手当」に載せています。