
眼鏡をかけても新聞の字が読めない。明るい場所に出るとまぶしくて足もとが見えない。治療を続けていても、以前のようには見えなくなった。目の病気と付き合う中で、こうした「見えにくさ」と向き合っている方は少なくありません。
見えにくさがあっても、道具や住まいの工夫、使える制度を組み合わせることで、読む、書く、歩く、料理をするといった毎日の動作が楽になることがあります。このページでは、ロービジョンケアの考え方と主な道具、公的な支援制度、家族ができること、相談先を順に紹介します。どの方法が合うかは目の状態によって違うため、最初の相談相手は、ふだん診てもらっている眼科の主治医です。
ロービジョンとは
ロービジョンは、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても十分な視力が得られなかったり、見える範囲(視野)が狭くなったりして、日常生活に不自由がある状態を指す言葉です。まったく見えない状態だけでなく、「見えにくい」状態を広く含みます。
見えにくさの現れ方は、人によってかなり違います。
- 全体がぼやける、かすむ
- 真ん中が見えにくく、周りは見える
- 真ん中は見えるが、周りが見えない(筒の中からのぞいているような見え方)
- まぶしさが強い、暗い場所でとくに見えにくい
原因になる病気には、緑内障、網膜色素変性、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性などがあり、日本の中途失明の原因として上位にあげられる病気も含まれます。治療で進行をおさえることと、残っている見る力を生かす工夫は、どちらか一方ではなく並行して考えていくものです。
なお、見え方が急に悪くなった、見える範囲が急に欠けたといった変化は、ロービジョンケアを考える前に、その日のうちに眼科を受診すべきサインです。急ぐ症状は目の救急:すぐ受診したい症状と応急手当にまとめています。
ロービジョンケアでできること
ロービジョンケアは、残っている視機能をできるだけ生かし、道具や訓練、環境の工夫で暮らしのしづらさを減らしていく取り組みです。眼科医のほか、視能訓練士、歩行訓練を担う専門職、福祉の相談員などが関わります。
困りごと別に、よく使われる道具や工夫を挙げてみます。
| 困っていること | 道具や工夫の例 |
|---|---|
| 小さな字が読めない | 拡大鏡(手持ち型、置き型)、拡大読書器、タブレットの拡大表示 |
| まぶしくて見えにくい | 遮光眼鏡、つばのある帽子、カーテンやブラインドの調整 |
| 長い文章を読むと疲れる | 画面の読み上げ機能、音声で聞ける図書 |
| 手元が暗い | 手元を照らす照明、色の差がはっきりした食器やまな板 |
| 外を歩くのが不安 | 白杖、歩行訓練 |
| 遠くの表示が見えない | 単眼鏡、スマートフォンのカメラで撮って拡大する |
拡大鏡と拡大読書器
拡大鏡は、倍率を上げるほど大きく見える一方で、一度に見える範囲は狭くなります。読みたいものや使う場面に合わせて選ぶ必要があり、自己流で買うより、眼科や専門の相談窓口で試してから決めるほうが失敗が少なくて済みます。
拡大読書器は、カメラで写した文字や写真を画面に大きく映し出す機器です。白黒を反転させ、黒い背景に白い文字で表示できるものもあり、まぶしさが強い人には読みやすいことがあります。
遮光眼鏡
遮光眼鏡は、まぶしさの原因になりやすい波長の短い光を中心にカットし、見え方のコントラストを保つように作られた眼鏡です。ふつうのサングラスとは目的が違い、レンズの色や濃さを何種類も試してから選びます。
タブレットやスマートフォン
文字の拡大、画面の色の反転、読み上げ、音声での操作など、見えにくさを補う機能を最初から備えた機器が増えています。家族に設定を手伝ってもらいながら、少しずつ慣れていくのもひとつの方法です。
照明と住まいの工夫
部屋全体を明るくするだけでなく、手元を照らす照明を足すと、読み書きが楽になることがあります。反対に、光源が直接目に入るとまぶしさが増すので、照明の向きにも気を配ります。階段の段の縁や、スイッチの周りに目立つ色のテープを貼る、よく使う物の置き場所を決めて動かさない、といった工夫も効果があります。
白杖と歩行訓練
白杖は、足もとの段差や障害物を確かめる道具であると同時に、周りの人に見えにくさがあることを知らせる役割も持っています。安全に歩くための杖の使い方や、よく通る道順の覚え方は、歩行訓練で専門の訓練員から教わることができます。訓練は、視覚障害のある人を支える施設や団体などで行われています。
身体障害者手帳(視覚障害)の申請
視力や視野の状態が一定の基準にあてはまる場合、身体障害者手帳(視覚障害)の交付を受けられることがあります。等級は視力と視野の状態によって決まり、1級から6級まであります。
申請のおおまかな流れは次のとおりです。
- 主治医に、手帳の対象になるかどうかを相談する
- お住まいの市区町村の障害福祉の窓口で、申請に必要な書類を確認する
- 指定を受けた医師(眼科医)に、身体障害者診断書・意見書を書いてもらう
- 診断書と申請書、写真などをそろえて、市区町村の窓口に提出する
- 審査を経て、手帳が交付される
診断書を書けるのは、身体障害者福祉法にもとづいて指定を受けた医師です。かかりつけの眼科で書けない場合でも、書ける医師を紹介してもらえることがあります。書類や手続きの細かな点は自治体によって違うので、まずは窓口に問い合わせてください。
手帳を持つと、税の控除や公共交通機関の運賃の割引など、受けられる支援があります。内容は等級や自治体、事業者によって異なります。
補装具と日常生活用具
補装具
障害者総合支援法にもとづく補装具の制度では、視覚障害のある人に向けて、白杖(視覚障害者安全つえ)や義眼、遮光眼鏡を含む眼鏡などが対象になっています。主に身体障害者手帳を持つ人が対象で、市区町村に申請して認められると、費用の一部を自己負担して購入や修理ができます。自己負担の額は所得によって変わります。
日常生活用具
日常生活用具の給付は、市区町村が行う事業です。視覚障害のある人向けには、拡大読書器や、音声で時刻や体温を知らせる機器、点字を書く道具などが対象になっていることが多いものの、対象の用具や条件、自己負担の額は自治体によって違います。申請より前に買ったものは対象にならないことが多いので、先に購入してしまわず、窓口で確認してから進めてください。
外出を支える同行援護
同行援護は、視覚障害によって移動にいちじるしい困難がある人の外出に、ガイドヘルパーが付き添う障害福祉サービスです。目的地までの移動を手助けするだけでなく、外出先での代筆や代読なども含まれます。通院や買い物、役所の手続きなど、暮らしの中の外出で使われています。
利用するには市区町村の窓口に申請し、利用できるかどうかや、月に使える時間などが決まります。費用は、所得に応じた自己負担があります。
家族や周りの人ができること
見えにくさのある人にとって、家族や身近な人のちょっとした声かけは大きな助けになります。
- 話しかけるときは、先に名前を呼んでから話す。黙って近づいたり離れたりしない
- 「あれ」「そこ」ではなく、「右手のすぐ前に湯のみがあります」のように具体的に伝える
- 食卓の物の位置は、時計の文字盤にたとえて「3時の方向にお茶」と伝える方法もある
- 家具や物の置き場所を、本人に断らずに変えない
- 一緒に歩くときは、本人に肘の少し上を軽く持ってもらい、半歩前を歩く
- できることまで先回りしてやってしまわず、どうしてほしいかを本人に聞く
見え方が変わっていく途中では、本人が気持ちのうえでつらさを抱えることも少なくありません。通院に付き添ったとき、家で困っている場面を家族の目から医師に伝えるのも、ひとつの支え方です。
相談できる場所
ロービジョンケアの入り口は、まず主治医への相談です。そのうえで、市区町村の福祉の窓口や、視覚障害のある人を支える施設・団体に相談する道があります。
京都府内では、京都ライトハウスが、視覚障害のある人の暮らしや情報、訓練などに関わる支援を行っています。ロービジョンケアについての全国的な情報は、医療や福祉、教育の専門職が参加する日本ロービジョン学会のサイトで調べることができます。子どもの見えにくさについては、各地の視覚特別支援学校(盲学校)が教育相談を受け付けていることがあります。
ロービジョン外来のことを主治医に聞くには
眼科の中には、ロービジョン外来を設けたり、ロービジョンケアの相談の時間をとったりしているところがあります。ふだん通っている眼科にない場合でも、主治医から紹介してもらえることがあります。「治療の話ではないから」と遠慮せず、診察のときにこう切り出してみてください。
「治療とは別に、生活の中で見えにくくて困っていることがあります。ロービジョンケアを受けられるところを教えていただけますか。」
相談の前に、次のようなことをメモにしておくと、話が具体的になります。
- 困っている場面(新聞や郵便物を読む、料理、階段、夜道、仕事の書類、スマートフォンの操作など)
- まぶしさや、暗い場所での見えにくさがあるか
- 今使っている眼鏡や拡大鏡、照明
- 一人暮らしか、手伝ってくれる家族がいるか
- 仕事や学校で必要な作業
受診先を新しく探すときは、眼科の探し方と受診ガイドや目の悩み、どこに相談する?もあわせて読んでみてください。見え方に急な変化があったときは、ロービジョンの相談を待たず、その日のうちに眼科を受診してください。