子どもの目

子どもの近視と外遊び:夏休みに見直したい生活習慣

読了の目安 約11分文:堀江 美穂

子どもの近視と外遊び:夏休みに見直したい生活習慣

夏休みに入ると、子どもの一日はがらりと変わります。朝の涼しいうちにドリルを少し進めて、日中は暑いからと家の中で過ごし、気がつけばタブレットや携帯ゲームの画面をのぞき込んでいる。わが家でも、休みが始まって二週間ほどで、そんな過ごし方がすっかり定着してしまいました。

学校の視力検査の結果を見て、「この子、近視かもしれない」と気になり始めるのも、ちょうど小学生のころです。近視そのものは珍しいものではありません。ただ、子どものうちの生活習慣が、近視の始まりや進み方に関わるとされています。生活のリズムが変わる夏休みは、家族で習慣を見直すのにちょうどよい時期です。

近視は「目の奥行き」が伸びること

近視と聞くと、遠くがぼやけて見える状態を思い浮かべる方が多いと思います。その見え方の裏で何が起きているのかを知っておくと、日々の工夫の意味が分かりやすくなります。

目はよくカメラにたとえられます。黒目の表面にある角膜と、その奥の水晶体がレンズの役目をして、入ってきた光を目の奥の網膜に集めます。網膜の上でぴたりとピントが合うと、ものがはっきり見えます。

目の前から後ろまでの長さを「眼軸(がんじく)」といいます。眼軸が伸びて目が前後に長くなると、ピントが網膜より手前で合ってしまい、遠くのものがぼやけます。子どもの近視の多くは、この眼軸が伸びることで起こるタイプです。

眼軸は体の成長とともに伸びていきます。背がぐんぐん伸びる時期に近視が進みやすいのは、このためと考えられています。そして、一度伸びた眼軸は、基本的に元には戻らないとされています。近視の話が「治す」よりも「進み方をどうゆるやかにするか」という方向で語られるのは、ここに理由があります。

一方で、子どもの場合は、ピントを合わせる目の筋肉が緊張したままになり、一時的に近視のような見え方になっていることもあります。眼軸が伸びているのか、ピント調節の影響なのかは、家庭では見分けられません。眼科では、ピント調節を休ませる目薬を使ってから度数を測ることもあります。

子どものうちが大切だといわれるわけ

近視は、始まる年齢が早いほど、成長が落ち着くまでに進む期間が長くなります。小学校の低学年で近視になった子と、中学生になってから近視になった子とでは、そこから先に眼軸が伸びていく年数がちがいます。早く始まるほど強い近視になりやすいと考えられているのは、このためです。

近視が強くなると、大人になってから網膜や視神経の病気が起こりやすくなることも知られています。いま黒板が見えるかどうかだけでなく、何十年も先の目のことを考えて、子どものうちから気にかけておきたい。近視がたびたび話題になるのは、そうした理由からです。

近視のなりやすさには、親から受け継ぐ体質も関わるとされ、両親が近視の家庭では、子どもも近視になりやすいといわれます。メガネをかけている保護者の方は、自分が近視になったのは何歳ごろだったか、思い出してみるのもよいかもしれません。体質そのものは変えられませんが、毎日の過ごし方は家族で見直すことができます。

小さい子どもならではの事情もあります。見る力そのものは生まれてから少しずつ育ち、6〜8歳ごろまでがとくに大切な時期とされています。近視の度が強かったり、左右の目で度数の差が大きかったりすると、見え方の発達に影響することがあります。3歳児健診のころの目の話は、以前のコラム「3歳児健診の目の検査:弱視を見逃さないために」に書きました。健診で何も言われなかった子でも、成長とともに見え方は変わっていくので、小学生になってからも気にかけていきたいところです。

外で過ごす時間についての報告

近視と生活習慣の関係で、よく取り上げられるのが外で過ごす時間です。屋外で過ごす時間が長い子どもは近視になりにくい、という報告が多くあり、目安として1日2時間程度の屋外での活動がよく挙げられます。

理由としては、屋外の明るさや、遠くを見る時間が増えることなどが考えられていますが、くわしいしくみについては今も研究が続いています。また、これは主に「近視になるのを防ぐ、遅らせる」という方向の話で、外で遊べば近視が治るというものではありません。そこは誤解のないようにしておきたいところです。

とはいえ、京都の夏の昼間に、子どもを2時間外で遊ばせるのは現実的ではない日もあります。熱中症のほうがよほど心配です。わが家では、次のような形で「外の時間」を少しずつ足していくことにしています。

  • 朝の涼しいうちに、近所を散歩したり公園に寄ったりする
  • 夕方、日が傾いてから、鴨川の河原のような風の通る場所を歩く
  • プールや習い事の行き帰りを、なるべく歩いて移動する
  • 朝顔の水やりやセミの抜け殻探しなど、短い用事を外でする

まとまった2時間でなくても、こうした時間を積み重ねていく考え方がよく紹介されています。八月の終わりには町内の地蔵盆もあり、子どもが外で集まる機会が増える時期でもあります。

外に出るときは、暑さ対策と一緒に、日差しから目を守ることも忘れずに。帽子のつばの長さや子ども用のサングラスについては、「京都の夏と紫外線:目を守る帽子とサングラス」でくわしく書いています。こまめな水分補給と、真昼の時間帯を避けることも基本です。

手元を見るときの四つの習慣

外の時間と並んで見直したいのが、本やノート、画面など、近くを見る時間の過ごし方です。夏休みは、ドリルのほかに読書感想文や自由研究もあって、机に向かう時間が長くなりがちです。近くを見続けていると、ピントを合わせる筋肉は休みなく働き続けます。家庭で取り入れやすいのは、次の四つです。

距離は30cm以上

目と本や画面との距離は、30cm以上あけるのが目安とされています。30cmは、学校で使う30cmものさし1本分です。言葉で「離して」と言うより、一度ものさしを当てて見せると、子どもにも伝わりやすいようです。夢中になると顔はどうしても近づくので、気づいたときに声をかけるくらいの気持ちで続けます。

30分に一度、遠くを見る

30分ほど続けたら、いったん顔を上げて、窓の外の景色など遠くを見るようにします。ほんの短い時間でも、ピントを合わせる筋肉を休ませるきっかけになります。キッチンタイマーをかける、ドリルを1ページ終えたら窓の外を見る、といった区切りを決めておくと続けやすくなります。

姿勢を整える

寝転がったり、うつぶせになったりして本や画面を見ると、目との距離が近くなりがちです。背中が丸まると、自然と顔も前に出ます。椅子に深く座ったとき、足の裏が床につく高さになっているか、一度確かめてみてください。成長期は体に合う机と椅子の高さが変わりやすいので、学年が上がるたびに見直すと安心です。

部屋全体を明るく

暗い部屋で手元や画面だけが明るい状態は、目が疲れやすくなります。勉強するときは部屋の照明をつけたうえで、机のライトで手元を照らします。右利きの子なら左側から、左利きの子なら右側から光が当たるようにすると、手の影がノートに落ちにくくなります。

タブレット学習と家での画面

GIGAスクール構想で、小中学校では一人一台の端末を使う授業が当たり前になりました。夏休みの宿題に端末を使う学校もあると思います。画面を見る時間が増えるのは、いまの子どもたちにとって避けられない面があります。

端末そのものを悪者にする必要はありません。気をつけたいのは、使い方と、一日の合計の時間です。

タブレットは机に置いて少し傾けると、顔との距離をとりやすくなります。手に持って見ていると、腕が疲れてだんだん顔に近づいてくるためです。文字が小さくて読みにくいときは、顔を近づけるのではなく、画面の表示を拡大するよう教えておくと役に立ちます。スマートフォンや携帯ゲーム機は画面が小さいぶん、どうしても目に近づけがちなので、長い時間続けないように気をつけます。

家での画面の時間は、宿題、動画、ゲームを合わせると、思っていたより長くなっていることがあります。一日の流れをざっと紙に書き出してみると、子ども自身も驚くかもしれません。時間の決まりは、親が一方的に決めるより、子どもと一緒に話し合って決めたほうが守られやすいと感じます。学校から配られるお便りに端末の使い方の目安が書かれていることもあるので、家族で読み合わせるのもよい機会です。

寝る前の画面は、寝つきにも影響しやすいといわれます。夜は早めに端末を片づける時刻を決めておくと、目を休める時間も自然と増えていきます。

メガネで近視が進む、という心配

保護者どうしで話していると、「メガネをかけると近視が進むから、できるだけかけさせたくない」という声を耳にすることがあります。けれど、目に合ったメガネをかけることで近視が進むわけではない、と考えられています。

むしろ、見えにくいまま過ごしていると、黒板の字が読めずに授業についていきにくくなったり、目を細めて見るせいで疲れやすくなったりします。ボールが見えにくいせいで、自分は運動が苦手だと思い込んでしまう子もいるかもしれません。見えにくさは、子ども自身がうまく言葉にできないことも多いものです。

度数を弱めにしておけば近視が進みにくい、というものでもありません。メガネの度数や、どんな場面でかけるか(黒板を見るときだけか、一日中か)は、目の状態によってちがいます。子どものメガネは、眼科で検査を受けて、その結果をもとに作るのが基本です。成長とともに度数が変わることも多いので、作ったあとも定期的に眼科で見てもらいます。

近視の進み方をゆるやかにする治療

近年は、子どもの近視の進み方をゆるやかにすることを目的とした治療も行われるようになりました。目薬を使う方法や、特殊な設計のメガネやコンタクトレンズを使う方法などがあります。

方法によって、対象となる年齢や近視の程度、通院の回数、費用がちがいます。効き方には個人差があり、始めたら終わりというものでもありません。多くの場合、定期的に度数や眼軸の長さを測りながら、続けるかどうかを見直していくことになります。

どの方法が向いているか、そもそも治療を始めるかどうかは、眼科医が目の状態を調べたうえで判断し、本人や家族と相談して決めるものです。インターネットで見かけた情報や、まわりの家庭の話だけで決めずに、まずは眼科で説明を聞いてみてください。気になることや不安なことをメモにしてから受診すると、聞き漏らしが減ります。

「目がよくなる」とうたう器具や食品の情報を目にすることもあります。判断に迷うときも、眼科で聞いてみるのがいちばん確かです。

こんなときは眼科へ

近視かどうか、どのくらい進んでいるかは、眼科で検査をしてはじめて分かります。家庭で次のような様子が見られたら、眼科に相談してみてください。

  • テレビや画面に近づいて見る、目を細めて見る
  • 首をかしげたり、横目で見たりする
  • よく目をこする、まばたきが多い
  • 黒板の字が見えにくい、と言う
  • 明るい場所でまぶしそうに片目をつぶる
  • 学校の視力検査で、眼科の受診をすすめるお知らせをもらった

学校の視力検査は、A〜Dのような区分で結果が返ってくることが多く、学校によっては受診をすすめる用紙が一緒に届きます。「念のため」と後回しにせず、夏休みのうちに受診しておくと、新学期を落ち着いて迎えられます。夏休みは同じように考える家庭が多く、眼科が混み合うこともあるので、早めに受付時間や予約の方法を確かめておくと安心です。学校や自治体の健診の流れは「目の健康診断ガイド」にまとめています。

眼科では、視力を測るだけでなく、目の度数や目の奥の状態も調べます。子どもの場合は、先に書いたように、ピント調節を休ませる目薬を使ってから検査をすることがあり、目薬が効くまで待つぶん、時間が長めにかかることもあります。目薬の種類によっては、しばらくまぶしさや手元の見えにくさが残るので、受診の日は予定を詰め込みすぎず、帰り道は大人がそばについていると安心です。学校の視力検査のお知らせや、これまでの健診の記録があれば持っていくと、話がスムーズに進みます。

次のようなときは様子を見ずに、その日のうちに眼科を受診してください。

  • 急に見えにくくなった、ものが二重に見えるようになった
  • 目をぶつけたあと、見え方がおかしい、痛みが続く
  • 目が強く痛む、ひどく充血している
  • 洗剤などの薬品が目に入った(こすらずに、すぐ大量の流水で15分以上洗ってから受診する)

夜間や休日で受診先に迷うときは、救急安心センターきょうと(#7119)に電話で相談できます。看護師などが、受診したほうがよいかどうかや、受診できる医療機関を案内してくれます。命に関わるような緊急のときは、迷わず119番に連絡してください。どこに相談すればよいか分からないときの考え方は、「目の悩み、どこに相談する?」のページで紹介しています。

外で過ごす時間を少し足して、手元を見るときの距離と休憩を家族で決める。気になることがあれば、眼科で見てもらう。どれも特別なことではありませんが、毎年の夏の過ごし方の積み重ねが、子どもの目の先々につながっていきます。

この記事を書いた人堀江 美穂

子育て・教育分野のライターで、小学生の母。乳幼児健診や学校の視力検査、家庭でできる工夫など、子どもの目の話題を保護者の目線で取り上げます。

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