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京都の夏と紫外線:目を守る帽子とサングラス

読了の目安 約11分文:西田 葵

京都の夏と紫外線:目を守る帽子とサングラス

祇園祭の宵山の夜、四条通から室町通のあたりは、駒形提灯の明かりと祇園囃子の音に包まれます。明日はいよいよ前祭の山鉾巡行です。日が暮れても熱気の残る通りを歩いていると、今年も京都の夏が本番を迎えたことを肌で感じます。

夜のにぎわいとは打って変わって、昼間の京都の暑さは格別です。巡行を見物する沿道や、鉾の組み立てを眺める通りでは、照りつける日差しの下で長い時間立っている人をたくさん見かけます。汗や水分補給には気を配っていても、目のことまで考えている人は、まだ多くはないかもしれません。夏の日差しには紫外線がたっぷり含まれていて、肌だけでなく目にも影響があるとされています。

盆地の夏、日差しは上からも下からも

京都は三方を山に囲まれた盆地で、夏は風が抜けにくく、蒸し暑さがこたえる街として知られています。日中の照り返しの強い通りを歩くと、上からだけでなく足元からも熱がのぼってくるように感じます。

紫外線も、同じように四方から届きます。太陽から直接降りそそぐ分だけでなく、空気中で散らばったものや、地面や水面で照り返したものが、横や下からも目に入ってきます。鴨川の河原や、白っぽい砂利を敷いた境内、日差しを受けてまぶしく光る水面のそばでは、帽子のつばだけでは防ぎきれない光があることを覚えておきたいところです。

京都の夏は、水辺で過ごす楽しみが多い季節でもあります。鴨川の納涼床や貴船の川床、北部の海辺など、涼を求めて水のそばへ出かける機会が増えるぶん、照り返しの光を受ける時間も自然と長くなります。涼しさを感じる場所ほど、日差しの強さを忘れがちです。

紫外線は、一般に春から夏にかけて強くなり、一日のうちでは昼前後に強いとされています。晴れた日だけでなく、薄曇りの日にもかなりの量が届くといわれます。「今日は曇っているから大丈夫」と油断しやすい日こそ、少しだけ気をつけてみてください。

紫外線と目の関係

紫外線と目の関係には、すぐに症状が出るものと、長い年月をかけて影響が積み重なるものがあります。

すぐに症状が出るものとしてよく知られているのが、雪眼炎、いわゆる雪目です。雪山で強い照り返しを受けたあとに起こることが多いので冬の話と思われがちですが、紫外線を浴びて目の表面の角膜に炎症が起こるという点では、夏の海や川、山でも同じようなことが起こりえます。溶接の光で起こる電気性眼炎も、同じ仲間の角膜の障害です。こうした急な角膜の障害は、光を浴びてから数時間たってから症状が出ることが多く、夜になって急に目が痛み出して驚く人もいるといわれます。

次のような症状が出たときは、我慢せず眼科を受診してください。

  • 目の強い痛み、ゴロゴロした感じ
  • 涙が止まらない
  • 白目の充血
  • 光をひどくまぶしく感じる、目を開けていられない

夜間や休日で受診先に迷うときは、京都府内なら救急安心センターきょうと(#7119)に電話すると、看護師などが受診の必要性や医療機関を案内してくれます。痛む目をこすったり、手持ちの目薬を自己判断で何度もさしたりするのは避けましょう。

もう一つは、長い時間をかけて影響が積み重なるものです。長年にわたって紫外線を浴びることは、白内障や翼状片などの目の病気との関係が指摘されています。翼状片は、白目の表面の組織が黒目に向かって三角形に伸びてくる病気で、進んで黒目にかかってくると見え方に影響することもあります。白目の黒目寄りに黄色っぽい盛り上がりができる瞼裂斑という変化も、紫外線との関係がいわれています。白内障は年齢とともに誰にでも起こる変化ですが、紫外線もその要因の一つとして挙げられています。いずれも、ひと夏の日差しですぐに起こるわけではありませんが、毎年の積み重ねを考えると、若いうちから目を守る習慣をつけておく意味はあります。それぞれの病気の特徴は、目の病気の解説で紹介しています。

サングラスを選ぶときに見るところ

目を紫外線から守る道具として、まず思い浮かぶのがサングラスです。ただ、おしゃれのためのサングラスと、目を守るためのサングラスは、見るところが少し違います。選ぶときは、次のような点を確かめてみてください。

  • 紫外線をカットする表示があるか。タグや説明書に「UVカット」などの表示や紫外線透過率が書かれていることが多いので、まずそこを見る
  • レンズの色の濃さだけで選ばない
  • レンズが小さすぎず、顔の形に沿って横や上下のすき間が少ないか
  • 鼻や耳に当たる部分が合っていて、動いてもずれにくいか
  • 使う場面に合っているか(運転に使うか、水辺で使うかなど)

この中でいちばん見落としやすいのが、色の濃さです。私自身、サングラスは見た目で選ぶものだと長いあいだ思っていて、濃い色ほど目を守ってくれるような気がしていました。けれども、色の濃さと紫外線をカットする力は別のものです。むしろ、濃い色のレンズで視界が暗くなると、瞳孔、つまりひとみが光を取り込もうとして大きく開きます。そのときにレンズの紫外線カットが不十分だと、開いたひとみからかえって多くの紫外線が入り込み、逆効果になるおそれがあります。色が薄めでも紫外線をしっかりカットするレンズはあるので、色より表示を見て選ぶのが確かです。

サイズや形も見逃せません。紫外線は横や下からも入ってくるので、レンズが小さかったり、顔とのすき間が大きかったりすると、そこから光が入り込みます。顔の形に沿うデザインのものや、レンズがやや大きめのものは、横からの光を防ぎやすくなります。試しにかけてみるときは、正面を向くだけでなく、横を向いたり下を向いたりして、すき間から光が入ってこないか、鼻からずり落ちてこないかを確かめておくと、買ったあとに後悔しにくくなります。

水辺で過ごすことが多い人の中には、水面のぎらつきを抑える偏光レンズを選ぶ人もいます。ただし、ぎらつきを抑える働きと紫外線をカットする働きは別なので、こちらも表示を確かめましょう。また、とても濃い色のレンズは、車の運転、とくにトンネルや夕方以降には向かないとされています。メガネを使っている人は、度付きのサングラスや、メガネの上から掛けられるタイプもあります。紫外線に反応して色が変わる調光レンズもありますが、車の中ではフロントガラスが紫外線をさえぎるため、色が変わりにくいとされています。迷ったときは、眼鏡店で用途を伝えて相談してみると、レンズの種類を一緒に考えてもらえます。

京都ならではの注意もひとつ。お寺や神社を巡る日は、日差しの強い境内から薄暗いお堂の中へ入ることがよくあります。サングラスをかけたままだと、急に暗くなって足元の段差や敷居が見えにくくなります。建物に入るときはいったん外す、と決めておくと安心です。

帽子と日傘も一緒に

サングラスだけで夏の目を守りきるのは、実はなかなか難しいことです。つばの広い帽子をかぶると、上から目に届く光をかなり減らせるとされています。サングラスと帽子を組み合わせると、上からも横からも光を防ぎやすくなります。前にだけつばのある帽子より、ぐるりと一周つばのある帽子のほうが、横から差しこむ光もさえぎりやすくなります。風の強い河原では、あごひもがついているものや、頭に合ったサイズのものを選んでおくと安心です。

京都の夏の街では、日傘をさして歩く人の姿もすっかりおなじみになりました。日傘は顔のまわりに影をつくってくれるので、目にとってもうれしい道具です。人通りの多い祭りの日には、まわりの人に当たらないよう少し気をつかいながら使いたいところです。

歩く道を選ぶのも、手軽な工夫です。碁盤の目に通った京都の通りは、時間帯によって日陰になる側が変わります。同じ目的地に向かうのでも、建物の影や街路樹の陰が続く通りを選んで歩くだけで、目に入る光はずいぶん違ってきます。

夏の京都でよくある場面ごとに、気をつけたいことを並べてみました。

場面 気をつけたいこと
祇園祭の見物など、沿道で長く立って待つ つばの広い帽子とサングラスを組み合わせ、できるだけ日陰を選ぶ
鴨川の河原での散歩や夕涼み 水面からの照り返しと、横から入る光。日が傾くまでは帽子があると安心
丹後の海や琵琶湖での水遊び 砂浜と水面からの照り返し。長い時間を過ごすほど目にも負担がかかる
自転車での移動 風でずれにくいサングラスを。濃すぎるレンズで足元や信号が見えにくくならないように
夕方以降の外出 暗くなったら濃いサングラスは外す。暗い場所での見えにくさは事故のもとになる

子どもの夏の目

子どもの目は、大人に比べて水晶体の透明度が高く、紫外線が目の奥まで届きやすいとされています。夏休みは外で遊ぶ時間が長くなるので、帽子をかぶる習慣をつけてあげたいものです。ベビーカーでお出かけする赤ちゃんは、自分で日差しをよけることができません。日よけを使う、木陰を選んで歩くなど、大人が気づいて光をさえぎってあげてください。外から帰ったあと、子どもが目を痛がる、まぶしがって目を開けにくそうにしているといった様子があれば、早めに眼科で診てもらいましょう。

一方で、外遊びそのものを控える必要はありません。屋外で過ごす時間、目安として1日2時間程度の活動が、子どもの近視の発症予防に役立つという報告が多いとされています。日差しの強い昼前後は木陰を選ぶ、帽子をかぶる、こまめに休むといった工夫をしながら、夏の外遊びを楽しませてあげてください。

子ども用のサングラスを使う場合は、大人と同じように紫外線カットの表示を確かめましょう。おもちゃのサングラスの中には、紫外線をカットする表示のないものもあります。色付きのレンズでひとみが開いたうえに紫外線を通してしまうと、先ほど書いたように逆効果になりかねません。サイズが合わないと、ずれて結局かけなくなることも多いので、顔に合うものを選んであげてください。

夏はプールの季節でもあります。プールの水で目が赤くなることがあるので、ゴーグルを使うと楽に過ごせます。また、夏はプール熱と呼ばれる咽頭結膜熱や、はやり目のように、人から人へうつる結膜炎が増えやすい時期とされています。熱やのどの痛みと一緒に目が赤くなった、目やにが増えた、片目だけ強く充血しているといったときは、早めに眼科や小児科で診てもらい、タオルの貸し借りは控えましょう。はやり目の特徴は、春に書いた花粉の季節の目のかゆみのコラムでも、アレルギーとの違いとして触れています。

コンタクトレンズの紫外線カットは「部分的」

コンタクトレンズの中には、紫外線を吸収する素材を使ったものもあります。ただ、レンズが覆っているのは黒目のあたりだけです。白目やまぶた、目のまわりの皮膚までは守ってくれません。紫外線をカットするレンズを使っていても、外で長く過ごす日は、帽子やサングラスと組み合わせるのが基本です。

夏ならではの注意もあります。汗や日焼け止めが目に入ると、しみたり、レンズが汚れたりしやすくなります。プールや川、海でレンズをつけたまま水に入ると、レンズが外れて流されたり、水の中の微生物がレンズに付きやすくなったりするとされています。水に入るときはレンズを外してメガネに替える、どうしても必要なときはゴーグルを使うなど、使い方を見直してみてください。レンズのケアに水道水を使わないことも、いつもどおり守りましょう。

夏祭りや旅行のときだけ、おしゃれ用のカラーコンタクトレンズを使う人もいると思います。度が入っていなくても、カラーコンタクトレンズは視力を補正するレンズと同じ高度管理医療機器です。眼科で目の状態を確かめてから使う、人と貸し借りしない、決められた時間を守るといった基本は変わりません。

コンタクトレンズを使っていて、強い痛みや充血、まぶしさ、見えにくさが出たときは、すぐにレンズを外して、その日のうちに眼科を受診してください。

お盆と送り火のころに

八月に入ると、街はお盆の支度に移っていきます。16日の夜、五山送り火が夜空に浮かぶころには、昼間の暑さも少しやわらいで、夏の終わりの気配を感じます。季節ごとの目にまつわる記念日や行事は、目の記念日と健康イベントの歳時記でも紹介しています。

お盆休みは、帰省や旅行で遠出をする人も多い時期です。休みの間は、ふだん通っている眼科がお休みのこともあります。旅先や連休中に目のトラブルが起きたときの考え方は、連休・年末年始に目のトラブルが起きたらで取り上げています。急な強い痛みや見え方の変化があるときは、休み明けを待たずに受診先を探してください。命に関わるような緊急のときは、迷わず119番に連絡しましょう。

帰省して久しぶりに家族と過ごすと、ふだんは気づかない様子が目に入ることもあります。明るい場所でやけにまぶしそうにしている、新聞やテレビが見にくそうだ、段差でつまずきやすくなった。そんな変化に気づいたら、責めるような言い方ではなく、「一度眼科で見てもらったら」と声をかけてみてください。家族のひと言が、受診を考えるきっかけになることもあります。

夏の京都は、暑さも含めて楽しみの多い季節です。帽子とサングラスをいつものかばんに加えて、目にも少しやさしい夏を過ごしてください。日差しのあとに目の痛みやまぶしさが続くときは、早めに眼科で相談しましょう。

この記事を書いた人西田 葵

京都で暮らすライター。季節の移ろいと目の関係、毎日の習慣、京都の街の話題を担当。花粉、紫外線、乾燥と、季節ごとに目が気になる場面を拾っています。

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