目の健康習慣

ドライアイと画面の時間:まばたき・湿度・休憩の工夫

読了の目安 約11分文:西田 葵

ドライアイと画面の時間:まばたき・湿度・休憩の工夫

九月に入っても、京都の昼間はまだ夏の名残の暑さが続きます。それでも朝晩の風に少しずつ秋の気配がまじり始めるころ、仕事でパソコンに向かっていると、夕方には目がしょぼしょぼして、ついこすってしまう。そんな話を、まわりでもよく耳にするようになりました。

目の乾きは、ありふれた不調だけに、そのままにされがちです。けれど乾きの背景には、まばたきの回数や部屋の空気、画面との向き合い方など、暮らしの小さな習慣が関わっています。暖房で空気が乾く季節が来る前に、目のまわりの環境を一度整えておきませんか。

涙は「量」と「質」でできている

ドライアイは、涙の量が足りなかったり、涙の質が変わったりして、目の表面を涙がうまく覆えなくなる状態です。目が乾く、しょぼしょぼする、ゴロゴロする、疲れやすい、かすむ、といった症状のほか、意外なことに、涙が出やすくなることもあります。乾いた刺激に反応して、涙があふれてくるためです。

涙は、ただの水ではありません。目の表面にとどまるための成分や、蒸発を防ぐための油などが合わさって、薄い膜をつくっています。この油を出しているのが、まぶたのふちに並ぶマイボーム腺という小さな腺です。まつげの生えぎわのすぐ内側に、ごく小さな出口が並んでいます。

マイボーム腺の出口が詰まったり、出てくる油の質が変わったりすると、涙はすぐに蒸発してしまいます。涙の量は足りているのに、目の表面がすぐ乾いてしまう、ということも起こるのです。ドライアイというと涙の量に目が向きがちですが、こうした「質」の問題も大きく関わっているとされています。アイメイクをする人は、一日の終わりに、まぶたのふちまでやさしくメイクを落としておくと、油の出口を清潔に保つことにつながります。

涙の膜には、目の表面をなめらかに整える役目もあります。膜が乱れると、光がきれいに目の中に入らず、見え方がぼんやりすることがあります。夕方になると画面の文字がにじんで見える、まばたきをすると少しはっきりする、という人は、目の表面の乾きが関わっているのかもしれません。

一般に、年齢を重ねると涙の量は減りやすく、ドライアイは女性に多いともいわれます。若いころは平気だった空調の効いた部屋が、最近はつらく感じる。そんな変化も、目の表面からの小さな知らせです。

画面を見ていると、まばたきが減る

パソコンやスマートフォンの画面に集中していると、まばたきの回数が減ることが知られています。まばたきは、涙を目の表面に広げ直す、車のワイパーのような役目をしています。回数が減れば、そのぶん目の表面が乾いた空気にさらされる時間は長くなります。

回数だけでなく、まばたきが浅くなることもあります。まぶたが最後まで閉じきらない、半分だけのまばたきが続くと、目の下のほうが乾きやすくなります。

画面の位置も関係します。画面が目の高さより上にあると、自然と目を大きく開いて見ることになり、目の表面が空気に触れる面積が広がります。低い机でノートパソコンをのぞき込むときと、高い位置に置いた大きな画面を見上げるときとでは、目の開き方がずいぶんちがうのです。

在宅で仕事をする日が増えて、食卓やソファで画面を見る時間が長くなった、という人もいるでしょう。座る場所が変わると、画面の高さや距離、照明の当たり方も変わります。乾きを感じ始めた時期と、仕事の場所が変わった時期が重なっていないか、振り返ってみるのもひとつの手がかりです。

暮らしの中でできる工夫

特別な道具がなくても、今日から始められることはたくさんあります。

画面の高さと距離

画面は、目線よりやや下になるように置きます。見下ろす角度になると目の開きが小さくなり、乾きにくくなります。距離は、腕を伸ばして指先が届くくらいを目安に、近づきすぎないようにします。職場で情報機器を使う作業については、厚生労働省がガイドラインで、画面との距離や作業の合間の休み方の目安を示しています。勤め先の衛生管理の担当者に聞いてみると、職場の決まりが分かることもあります。

意識してまばたきする

ときどき、ゆっくりと、しっかりまぶたを閉じるまばたきをしてみます。目を閉じたまま一、二秒おいてから開くと、涙が目の表面に行き渡る感じがつかめます。メールを一通送ったら一回、資料のページを切り替えたら一回、というように、作業の区切りに結びつけると忘れにくくなります。

休憩をはさむ

作業が続いたら、いったん画面から目を離して、窓の外など遠くを眺めます。席を立ってお茶をいれる、ベランダに出て空を見上げる、といった短い休憩でも構いません。目を閉じて、しばらく休ませるのもよい方法です。

エアコンの風と湿度

エアコンや扇風機の風が直接顔に当たると、涙はどんどん蒸発します。風向きを変えたり、座る位置をずらしたりして、風が顔に当たらないようにします。加湿器を使う、洗濯物や濡らしたタオルを室内に干す、といった方法で部屋の湿度を保つのも役に立ちます。湿度計をひとつ置いておくと、乾きすぎに気づきやすくなります。車を運転するときも、エアコンの吹き出し口を顔に向けないようにします。

早めの秋冬対策

京都は盆地で、夏は蒸し暑く、冬は底冷えのする寒さで知られています。冬になって暖房を使い始めると、部屋の空気は一気に乾きます。乾燥が気になり始めてから慌てるより、九月のうちに加湿器を出して手入れをしておく、職場の席の風の当たり方を確かめておく、といった準備をしておくと、秋冬を楽に過ごせます。

秋は紅葉めぐりなど、外を歩く機会が増える季節でもあります。風の強い日には、メガネや帽子のつばが風よけになります。また、秋にもブタクサなどの花粉が飛びます。乾きと一緒に目のかゆみが気になる方は、「花粉の季節の目のかゆみ:アレルギー性結膜炎との付き合い方」もあわせて読んでみてください。

冬の京都の古い家では、足元から冷えるぶん、ファンヒーターやエアコンの温風を強めにしがちです。温風が顔に向かないよう、吹き出し口の向きを先に決めておきます。こたつに入ったままスマートフォンを眺めて、気づけば夜更かし、というのも、冬の目には負担の大きい過ごし方です。

一日の流れに組み込む

工夫は、思い立ったときだけでは続きません。たとえば、朝いちばんにパソコンを開いたら、まず画面の高さと椅子の位置を確かめる。昼休みは画面から離れて、外の光の中を少し歩く。午後の会議のあとには目を閉じて深呼吸をする。夕方、目がしょぼしょぼしてきたら、その日の画面の仕事は区切りのよいところでいったん止める。こんなふうに、一日の流れの中に小さな決まりをいくつか置いておくと、意識しなくても目を休める時間が増えていきます。

目薬を選ぶときは

乾きが気になるとき、まず手が伸びるのが市販の目薬だと思います。ドライアイ向けとしては、涙に近い成分で目の表面をうるおす、人工涙液と呼ばれるタイプの目薬が一般的です。

ただ、薬局の棚にはたくさんの種類の目薬が並んでいて、充血をやわらげるもの、かゆみを抑えるものなど、ドライアイとは目的のちがう目薬も少なくありません。また、目薬には品質を保つための防腐剤が入っているものと、入っていないものがあります。差す回数が多い人や、コンタクトレンズを使っている人は、どれを選べばよいか迷うところです。

防腐剤の有無を含め、自分に合う目薬は、薬局の薬剤師や眼科医に相談して選ぶのが確かです。購入するときに、乾きの症状で困っていることや、コンタクトレンズを使っているかどうかを伝えると、相談がスムーズに進みます。使い方や回数は、添付文書と薬剤師の説明に従ってください。

目薬を差しても乾きがよくならない、差してもすぐに元に戻ってしまう、という場合は、市販の目薬で様子を見続けずに眼科を受診してください。眼科では、涙の量や、涙が目の表面にとどまる時間などを調べたうえで、状態に合った治療を考えてもらえます。

コンタクトレンズと乾き

コンタクトレンズを使っている人は、目の乾きを感じやすい傾向があります。ソフトコンタクトレンズは水分を含んでいるため、レンズの表面から水分が蒸発したり、レンズが涙を吸ってしまったりして、目の表面が乾きやすくなるといわれます。

画面を見る時間の長さとコンタクトレンズが重なると、乾きはさらに強く感じられます。朝から夕方までレンズをつけたままパソコンに向かい、帰りの電車でもスマートフォンを見続けている、という日が続いていないか、一度振り返ってみてください。

乾きを感じながら装用を続けると、目の表面に傷がついたり、レンズに汚れがつきやすくなったりします。装用時間を守る、家ではメガネに切り替える、画面を見る時間が長い日は早めにレンズを外す、といった工夫を取り入れてみてください。コンタクトレンズは高度管理医療機器です。毎日のケアの基本は、「コンタクトレンズのトラブルを防ぐ毎日のケア」にくわしく書かれています。

レンズの種類を変えると楽になる人もいますが、自分だけで決めずに、眼科で目の状態を見てもらったうえで相談してください。インターネットでレンズを買い続けて、しばらく眼科で目を見てもらっていない、という人は、乾きをきっかけに一度受診しておくと安心です。

よく聞かれること

涙が出るのに、ドライアイと言われることはありますか

あります。目の表面が乾いて刺激を受けると、それに反応して涙があふれ出ることがあります。涙の量が多いように見えても、涙の質が変わっていて、目の表面を守る力が落ちている場合もあります。涙目が続くときも、一度眼科で相談してみてください。

まぶたを温めるとよいと聞きました

マイボーム腺の油の出が悪いときに、まぶたを温めるケアや、まぶたのふちを清潔に保つことが勧められることがあります。ただ、温めすぎてやけどをしたり、目の状態によっては向かなかったりすることもあるので、始める前に眼科で、自分の目に合うかどうかとやり方を確かめておくと安心です。

スマートフォンの画面を暗くすれば大丈夫ですか

画面の明るさを部屋の明るさに合わせると、まぶしさが減って目が楽になることはあります。けれど、乾きの大きな原因は、画面を見続けてまばたきが減ることです。明るさを調整するだけでなく、見続ける時間を区切ることと、意識してまばたきすることを組み合わせてみてください。寝る前に布団の中で画面を見続ける習慣も、見直してみる価値があります。

職場の席に加湿器を置けないときは、どうすればよいですか

自分の席の環境を大きく変えるのは、なかなか難しいものです。それでも、空調の吹き出し口の真下や、風がまっすぐ当たる位置にいる場合は、席の向きや場所を少し変えられないか、上司や担当の人に相談してみてもよいでしょう。メガネをかけるだけでも、目のまわりの空気の流れはいくらかやわらぎます。こまめに席を立ってお茶を飲む、昼休みに外の空気を吸う、といった小さな休憩を増やすことも、乾いた部屋で一日を過ごす目の助けになります。

乾きのほかにも気になる症状があります

目の乾きと一緒に、口の中の渇きなど、目以外にも気になる症状が続く場合は、ほかの病気が隠れていることもあります。眼科を受診するときに、目以外の症状や、ふだん飲んでいる薬もあわせて伝えると、原因を考える手がかりになります。

眼科へ行く目安

乾きは、疲れのせいだと思って見過ごされがちです。けれど、乾きだと思っていた症状が、実は結膜炎やまぶたの病気、目の表面の傷だった、ということもあります。次のようなときは、眼科を受診してください。

  • 工夫を続けても、乾きやゴロゴロした感じがよくならない
  • 市販の目薬を使っても、症状が変わらない
  • 目の疲れや乾きのせいで、仕事や家事に差しさわりが出ている
  • 涙目や目やにが続く

一方で、次のようなときは、様子を見ずにその日のうちに眼科を受診してください。

  • 目に強い痛みがある
  • 急に見えにくくなった、かすみがひどい
  • まぶしくて目を開けていられない
  • 充血がひどく、目やにが多い
  • コンタクトレンズをつけていて、痛みや充血が出た(すぐにレンズを外して受診する)

コンタクトレンズを使っているときの強い痛みや充血は、目の表面の感染症などのことがあり、早めの手当てが必要です。夜間や休日に急な症状が出て迷うときは、救急安心センターきょうと(#7119)に電話で相談することもできます。

平日の昼間に仕事を抜けるのが難しい方は、夜間や土曜の受付、予約の上手な使い方を「働く世代の眼科受診:平日夜・土曜・予約の使い方」で紹介しています。乾きのように命に関わらない症状ほど、受診は後回しになりがちです。受診の予定を先に手帳に書き込んでしまうのも、ひとつの方法です。

十月十日は目の愛護デーです。季節の変わり目に目のことを考える日として、「目の記念日と健康イベントの歳時記」でも取り上げています。その日を目安に、画面との距離や部屋の湿度、そして気になる症状をそのままにしていないかを、一度見直してみてください。

この記事を書いた人西田 葵

京都で暮らすライター。季節の移ろいと目の関係、毎日の習慣、京都の街の話題を担当。花粉、紫外線、乾燥と、季節ごとに目が気になる場面を拾っています。

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